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「焼き場に立つ少年」とは?

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 このモノクロ写真は、1945年9月、長崎で撮影された戦争の悲劇を象徴する一枚です。アメリカの従軍カメラマン、ジョー・オダネルが写した「焼き場に立つ少年」は、原爆投下後の凄惨な現実を世界に伝えました。

 写真には、10歳ほどに見える少年が、すでに亡くなった幼い弟を背負い、火葬の順番を待つ姿が捉えられています。少年は裸足で、背筋をぴんと伸ばし、まるで軍人のように直立不動の姿勢をとっています。その固く結ばれた唇と、一点を見つめる強い眼差しは、言葉にできないほどの深い悲しみを、懸命に耐え忍ぶ少年の尊厳を表しています。

 弟が火葬されるのを最後まで見送ったというこの少年の姿は、戦争がもたらす極限の悲しみを訴えかけます。

 この写真は、現在もなお世界に大きな影響を与え続けており、2017年にはローマ教皇フランシスコが「戦争がもたらすもの」という言葉を添えて世界に配布したことでも知られています。被写体の身元は不明のままですが、その強烈なメッセージは、核兵器廃絶と平和への願いを世界中に問いかけ続けています。

モノオペラ「焼き場に立つ少年」が誕生するまで

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 このモノオペラは、米従軍カメラマン、ジョー・オダネル氏が長崎で撮影した同名の衝撃的な写真がモチーフです。作曲家、故・青英権(あおひでのり)氏が約10年かけて作り上げた、登場人物が一人のオペラ作品です。

 亡き弟を背負い、直立不動で火葬を待つ少年の、固く閉ざされた心の内に秘めた悲しみと、それに耐え抜く人間の尊厳を、音楽と歌声で深く描きます。

少年の無言の叫びは、戦争の悲劇を訴え、観る者の心を強く揺さぶります。この作品は、その強力なメッセージ性から、平和教育の教材としても活用され、世代を超えて平和の尊さを伝え続けています。

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